ペタコさんの 和のある暮らし
[第2回] 着物ポケット
石橋富士子

着物で出かける時は,荷物を少なくして右手はいつも使える状態にしておきます。それは,右手を使う機会がなにかと多いから。風でひるがえる裾を押さえたり,吊革を持つ時に裾口をつまんだり。階段を上がる時も裾を持ち上げます。階段でうっかり裾を踏んでしまい,一瞬にして着物が着崩れてしまうこともあるの注意!
「転ばぬ先の杖」で,一見優雅そうな着物の立ち居振る舞いですが,動作の手順考えて頭はフル回転しています。いざというときのために荷物は少なく片手にまとめ,とっさに使える手を空けておきたいのです。
しかし,年々持ち物が多くなるばかり。デジカメ,携帯電話,スケジュール帳,文庫本,冷房のきついところでのストール,そして最近は老眼鏡(笑)。カバンが大きくなるのは仕方のないことでしょうか。
最近良いことを発見しました! 着物には帯があって,そこはまるでドラえもんのポケット。財布,携帯電話,扇子,小銭入れ,カード入れ,ハンカチ,ティッシュ,鍵,これくらいなら難なく収納出来るんですね。帯の間から落ちないか心配になりますが,帯板に手ぬぐいを巻いてポケット状にすれば安心です。
以前読んだ本にこんなことが書いてありました。その方は,立食パーティーなどで,グラスや食べ物で手がふさがってしまった時,パーティーグッズをさっとお太鼓に挟んで手を空けるのだとか。腕に下げるよりスマートな方法です。一度機会があったら試してみたいですね。そのときのバッグは,ざっくりとした風合いで柔らかい布製の,薄い細長いタイプが,帯に収まって違和感がないと思います。
着物は,色々な部分に物を入れるスペースがある,便利な衣装ですね。帯や胸元,それから袂にも,かなり広いスペースが控えています。 秋は着物でお出かけしたくなるシーズンです。あなたもポケットを活用して身軽に出かけてみませんか?
(2008年10月25日発行 家庭科通信37号掲載)
著者プロフィール
石橋 富士子(いしばし ふじこ)
毎日を着物で暮らすイラストレーター。教科書,絵本などの他,和小物製作デザインやオリジナル落雁の型を使った落雁作りワークショップなどを開催。「家庭科通信」の表紙も創刊時から手がけている。著書に「知識ゼロからの着物と暮らす・入門」「知識ゼロからの着物と遊ぶ」(幻冬舎)。着物をもっと楽しむための刺繍和小物を作る富士商会を2015年設立。https://fujipeta.com/
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