ペタコさんの 和のある暮らし
[第12回]衣替え
石橋富士子

そろそろ衣替えの季節です。
天気の良い日を選んで袷に風を通し,シミや汚れがないかチェックします。状態の良いものは,たたんで行李にしまいます。シミや食べこぼしなどがついていると,虫食いの原因になるので気を遣います。普段着用にしている紬などはクリーニングに出し,大切な着物は洗い張りに出します。
袷に変わり,単衣や麻,絽などを引き出しに収めます。
これで衣替え終了のはずなんですが,残念ながら最近の天気は不安定で,夏のように汗ばむ日もあれば,花冷えのように寒い日もあり,せっかくしまった着物を引っ張り出すことも多いのです。失敗を何度も繰り返して,狭間の対策に気を遣うようになりました。
狭間の季節に使えそうな着物を用意しておきます。単衣の紬で透け感のない,無地や縞などが重宝します。
汗ばむ日は襦袢を薄いものや麻などにして調節します。肌寒い日は,裾除けやタイツなどインナーを増やします。
単衣の着物は手入れも楽なので,季節の境目だけではなく一年中重宝しています。同じ一枚で春には春らしさ,秋には秋らしさを演出できます。都会には街並に自然を感じるものがだんだん少なくなっています。新しい季節が来たなあと感じるのは,意外にもデパートのショーウインドウや電車の中吊り広告からの方が多いでしょうか。
よく見ると桜や沈丁花や紫陽花など,その季節だけ咲く花も街の片隅で咲いています。
着物を着ている人にも季節を感じます。
さりげなく取り入れた紫陽花の花,紫色,梅の実,流水,蓮,カエル,朝顔,ホオズキ,蛍など,これから夏に向かってさまざまな柄と涼しげな色と出会えるかなと,とても楽しみです。
着物を着ることは,季節感を微力ながら演出するお手伝いをしているのかしら?という心で,ますます感性を豊かにして着物を楽しまなくちゃと思います。
著者プロフィール
石橋 富士子(いしばし ふじこ)
毎日を着物で暮らすイラストレーター。教科書,絵本などの他,和小物製作デザインやオリジナル落雁の型を使った落雁作りワークショップなどを開催。「家庭科通信」の表紙も創刊時から手がけている。著書に「知識ゼロからの着物と暮らす・入門」「知識ゼロからの着物と遊ぶ」(幻冬舎)。着物をもっと楽しむための刺繍和小物をつくる富士商会を2015年設立。https://fujipeta.com/
一覧に戻る