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ペタコさんの 和のある暮らし
[第15回]庭の植物とともに
石橋富士子

 我が家の猫の額ほどの庭には,毎年夏から秋にかけて零余子,アケビやカラスウリなどつる性の植物が繁茂します。

 成長が早いつる植物は,ちょっと目を離すとジャングルのように茂ってしまうので,伸び具合をチェックし,つるが進みたがる方向をコントロールするのが日課です。

 零余子は山芋の肉芽で,小さな芋のような肉芽がつるに並び,ほどよく大きくなったところで収穫します。触れただけで転がり落ちるので見失わないように注意。取り損ねると忘れた頃に庭中から生えてしまうので焦ります。

 収穫した零余子は,大きいものは塩ゆでにしてお酒のおつまみ。小さいものは零余子ご飯にして秋の味覚を楽しみます。つんとした香りとねっとりとした舌触りが魅力です。

 アケビは地植えしてから10年ほど経ちますが未だに実らず。とりあえず利用できるつるをリース材料に使います。たくさん採れたら籠を編んでみたいものです。

 リースにはやはり庭でなったカラスウリの実をアクセントに。夏に白いレースのような花を咲かせるカラスウリは,秋になると濃いオレンジ色になり沈む太陽のようにきれいです。こうして庭に植物を育て,観察して収穫,食べたり飾ったりする楽しさは格別です。

 植物は季節の寒暖や時期などを敏感に教えてくれます。寒い冬の次の年は芽吹きが遅く,たくさん採れた次の年は実付きが少なくて,樹も一休みしているんだなあと思ったり。樹の年齢に比例して葉の大きさや実の大きさが変化し,ピークを過ぎると徐々に実の付き方も減っていきます。

 声を発しない植物たちですが,こちらが知りたいと思えば案外雄弁に語っています。

 植物と四季をともにする,花鳥風月とともに季節をすごすことは,昔から日本にあった素敵なライフスタイルだと思っています。
 

(2014年9月1日発行 家庭科通信55号掲載)

 

著者プロフィール

石橋 富士子(いしばし ふじこ)

毎日を着物で暮らすイラストレーター。教科書,絵本などの他,和小物製作デザインやオリジナル落雁の型を使った落雁作りワークショップなどを開催。「家庭科通信」の表紙も創刊時から手がけている。著書に「知識ゼロからの着物と暮らす・入門」「知識ゼロからの着物と遊ぶ」(幻冬舎)。着物をもっと楽しむための刺繍和小物をつくる富士商会を2015年設立。https://fujipeta.com/

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