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ペタコさんの 和のある暮らし
[第19回]日本にある素敵なものをつたえたい
石橋富士子

 最近,街を歩いていると海外からの観光客が増えたことに気がつきます。

 渋谷や銀座,六本木などで,地図や案内板とにらめっこしている海外からのお客様。ヨーロッパやアメリカ,東南アジアからの人たちも多くみられます。駅や百貨店の案内板も日本語,英語,中国語,韓国語などが並んでいて,「おもてなし」の国日本ここにありといった感じでしょうか。

 ちょっと前までは日本の観光といえば浅草,京都,富士山が代表的な観光名所でしたが,今はもっと多様化,細分化しているように思えます。

 秋葉原,DIY の品が揃うハンズ,手芸専門店のユザワヤ,大型100円ショップなど,そこでしか売られていないユニークなものを求める外国の方もたくさんいらっしゃいます。

 駅の立ち食いそばの食べ歩き,渋谷の駅前スクランブルのまん中での写真撮影,カラオケ,回転寿司。混む時間帯めがけて満員電車を体験しようとする人も。

 老舗と新しいもの,古いものと最新のものがごちゃごちゃと混在し,雑居ビルのように存在する日本は外国からみるとさぞ不思議で魅力的な場所だろうなあと思います。

 和装と洋装も同じではないでしょうか。少し前までは両者は混ざることなく,線引きがきっちりとされていました。でも最近自分で身につけていても「着物姿が珍しい」という目立ち方はしなくなくなりました。「着物か洋服」という選択肢ではなく,「パンツかスカート,着物か」のように気軽に,着物が身近なものになってきたようです。

 さらに着物っぽい洋服,洋服っぽい着物になり,洋服+着物のコート,着物+洋服のコートなど着物と洋服の境目がどんどん曖昧になってきています。まるで富士山の裾野のように,着物から洋服の間に無数の選択肢が存在する。

 和という字には「和える,ブレンドする」という意味もあるそうです。うまく和えることができるセンスも日本の大きな魅力かもしれませんね。
 

(2014年3月25日発行 家庭科通信54号掲載)

 

著者プロフィール

石橋 富士子(いしばし ふじこ)

毎日を着物で暮らすイラストレーター。教科書,絵本などの他,和小物製作デザインやオリジナル落雁の型を使った落雁作りワークショップなどを開催。「家庭科通信」の表紙も創刊時から手がけている。著書に「知識ゼロからの着物と暮らす・入門」「知識ゼロからの着物と遊ぶ」(幻冬舎)。着物をもっと楽しむための刺繍和小物をつくる富士商会を2015年設立。https://fujipeta.com/

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