ペタコさんの 和のある暮らし
[第20回]たたむ,広げる
石橋富士子

食文化をはじめ,さまざまな日本文化が海外で注目されています。生活習慣や食べ物,文化など多岐にわたりますが,私達にとって身近な「折り紙」も人気があります。
千羽鶴や奴さん,五月には兜などを作った経験はみなさん一度はあるのではないでしょうか。
海外に旅行した時など,折り紙で何かを作って差し上げるとみなさん目を丸くして驚かれます。四角い紙がひと手ごとに形が変化してゆくのは,子供だけでなく,大人でも驚かれることでしょう。出来上がった鶴の羽根をぱたぱた動かして見せたら拍手が起きそうです。どこでもさっと作れるので,空港やレストランや,ホテルなどいつでも披露するチャンスがあります。海外に旅行する時はぜひ折り紙をご持参ください。きっと役に立ちますよ。
折り紙と同じように紙を使って作る細工物に,切り紙があります。これも折り紙と同じ四角い紙を最初は折るところからはじめます。作る形によって異なりますが,何カ所かにハサミを入れて広げると模様が生まれます。切り紙はつなげたり吊してモビールにしたり,窓ガラスに貼れば素敵な窓の飾りになります。折り紙と同じように「たたむ,広げる」ことで生まれる細工物です。
「たたむ,広げる」という作業は,とても日本的だと感じます。着物も同じようにたたむ,広げる作業を伴います。
洋服のようにカットすることなく直線を活かして作る着物は,すっきりとたたむことの出来る衣類として世界的にも珍しいものです。
着物の美しさはたたんでいる状態ではなく,広げて羽織ったり,身に纏うことで輝きます。
着ることで立体になった着物は,立ったり座ったり動くことでさらに美しく見えます。
私が毎日着物を着ることになった動機は,持っている着物の虫干しをかねて着ることでしたが,たたんだ着物と纏った着物で,同じ着物なのに全然違うように見え,それが面白くてどんどん手を通すようになりました。「たたむ,広げる」は日本文化。着物も折り紙も根っこが同じなのかもしれません。
(2015年3月25日発行 家庭科通信56号掲載)
著者プロフィール
石橋 富士子(いしばし ふじこ)
毎日を着物で暮らすイラストレーター。教科書,絵本などの他,和小物製作デザインやオリジナル落雁の型を使った落雁作りワークショップなどを開催。「家庭科通信」の表紙も創刊時から手がけている。著書に「知識ゼロからの着物と暮らす・入門」「知識ゼロからの着物と遊ぶ」(幻冬舎)。着物をもっと楽しむための刺繍和小物をつくる富士商会を2015年設立。https://fujipeta.com/
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