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ペタコさんの 和のある暮らし
[第29回]着物の楽しみ方,新しい風
石橋富士子

 今年に入ってから特に感じていたこと。それは,どうやら着物の世界がどんどん多様化しているらしい,ということ。

 若い人の着こなしは,洋服とのマッチングが絶妙です。袴はロングスカートのように,着物も短めに着て下にプリーツのスカートを合わせてブーツやヒールを履く。すべてのアイテムを計算して組み合わせ,絶妙なかわいらしさやかっこよさを楽しむ着こなしです。帽子やリボン,ランドセルなどもどんどん合わせてしまう。つけ衿を使って衿元をカラフルにしたりしては,インスタグラムなどのSNSに投稿して,共感を得た人の輪をリツイートで増やしています。

 若い人たちばかりではありません。着物歴の長い人たちにも変化が見られます。いわゆる「結ばない帯結び」を取り入れる人たちが増えてきています。「結ばない帯結び」とは,その名の通り帯を結びません。半幅帯を2つに折って,くるっと胴に巻き,その上から帯締で締めてできあがり。帯先を変えることでさまざまなアレンジができ,帯締の代わりに洋服のベルトや太いゴムなどを使えば今風です。

 実は,私も着物ビーズベルトを愛用。仕事をするときなど本当に助かっています。ゴムの適度な収縮感がコルセットのように腰にフィットして,着くずれも少なくなったような気がします。この結ばない帯結び,若者や着物好きの人たちだけではなく,着付けの先生や着物の雑誌でもさかんに話題になっていて,今までにない盛り上がりを見せています。

 着物は好きだけど帯結びが苦手で・・・。という声が多かったのですが,「結ばずにすむなら着物を着てみようか」という人は,かなり増えるのではないでしょうか。

 今までは,帯を結ばないと着物が完成しない,というハードルが高すぎました。年をとると背中に手が回せずに着物をあきらめていた年配の方がどれだけ多かったことか。そんな方にも「まだ,あきらめないで!」と言えそうです。

 来年はオリンピック。観光で,日本を訪れる外国の方が多くなると,おもてなしで着物を着たいという人も増えるでしょう。まずは,結ばない帯結びで着物を着てみませんか?着物はほんとに楽しいですよ。着物に慣れたら次は名古屋帯など「結ぶ帯結び」に挑戦して,さらに着物の世界を楽しんでくださいね。


 (2019年9月1日発行 家庭科通信65号掲載)

 

著者プロフィール

石橋 富士子(いしばし ふじこ)

毎日を着物で暮らすイラストレーター。教科書,絵本などの他,和小物製作デザインやオリジナル落雁の型を使った落雁作りワークショップなどを開催。「家庭科通信」の表紙も創刊時から手がけている。著書に「知識ゼロからの着物と暮らす・入門」「知識ゼロからの着物と遊ぶ」(幻冬舎)。着物をもっと楽しむための刺繍和小物をつくる富士商会を2015年設立。https://fujipeta.com/

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