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ペタコさんの 和のある暮らし
[第31回]手づくりマスク
石橋富士子

 新型コロナウイルスの影響で,マスクが市場からすっかり消えた時期がありました。しかたなく私もマスクを手づくりすることに。マスクなどそれまでつくったことがなかったので,不織布マスクを分解してそのしくみを調べたり,YouTube動画をお手本にしたりして,トライしてみました。

 基本的にマスクは「鼻と口を覆うのが役割」ですが,長時間つけていられるよう,耳や口にストレスがかからないようにする工夫は必要です。口のまわりのフィット感,耳にゴムが当たる角度,つけ心地,見た目,そして何よりウイルスの侵入・拡散を防ぐフィルターとしての機能が備わっていなければなりません。これならいいかな?と思えるマスクにたどりつくまで何枚も何枚もおかしなマスクをつくり,布もたくさん無駄にしました。

 いろいろ調べてみると,さまざまな特性の素材を重ねるとフィルターとしての機能が向上するというので,種類を変えて布を重ねます。木綿,シルク,麻,オーガンジーなどを使い,フィルターも交換できるよう内ポケットもつくりました。当初フィルターはカットしたペーパータオルを使っていましたが,さらに繊維の密度が高いナノフィルターがよいと聞いてそちらに変更しました。

 マスクの形は大きく分けて丸いフィッシュ型と呼ばれるタイプと長方形の上下に三角の布をつけた通称「大臣風」と呼ばれるものがあります。試してみると「大臣風」の方が空気の漏れも少なく呼吸しやすいのでそちらを採用することにしました。

 それにしても,冬にしか出番のなかったマスクを夏につけるなんて初めてのことではないでしょうか。気温も上がってきたので蒸れないよう,息苦しくならないように,縫い目に工夫を凝らして薄手で肌ざわりのいい素材で夏用のマスクをつくります。つくるマスクは,おもに私の主人の通勤用ですが,ご要望があるとつくってプレゼントしています。友人からの要望は「着物に似合うかわいいマスク」。上品さを損なわないマスクを,と側面にさりげない刺繍を入れました。刺繍を入れるとおしゃれ度が増すように思います。

 まだまだ油断ならない新型コロナウイルス。私たちにできることはマスクと手洗いとうがいくらい。見ると思わず口もとにつけたくなるかわいい手づくりマスクの需要は,まだまだ減りそうもありません。

(2020年9月1日発行 家庭科通信67号掲載)

 

著者プロフィール

石橋 富士子(いしばし ふじこ)

毎日を着物で暮らすイラストレーター。教科書,絵本などの他,和小物製作デザインやオリジナル落雁の型を使った落雁作りワークショップなどを開催。「家庭科通信」の表紙も創刊時から手がけている。著書に「知識ゼロからの着物と暮らす・入門」「知識ゼロからの着物と遊ぶ」(幻冬舎)。着物をもっと楽しむための刺繍和小物をつくる富士商会を2015年設立。https://fujipeta.com/

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