世界陸上 男子400リレー、9秒台3人で金メダル期待 100は初の決勝なるか
青木貴紀(時事通信社)
- 2019.09.27
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陸上の第17回世界選手権は9月27日から10月6日までの10日間、カタールの首都ドーハで行われる。来年の東京五輪の前哨戦と位置付けられ、マラソンを除く個人種目は日本人最上位でメダルを獲得し、参加標準記録を満たした選手が五輪代表に決まる。有望な日本勢の戦いを展望する。
サニブラウンを初起用へ
男子400メートルリレーは、2016年リオデジャネイロ五輪で銀メダル、前回17年大会で銅を獲得しており、悲願の金を視界に捉える。今回は9秒97の100メートル日本記録保持者、サニブラウン・ハキーム(米フロリダ大)を初めて起用する予定。ともに9秒98を持つ桐生祥秀(日本生命)と小池祐貴(住友電工)も入り、9秒台が3人そろった。
他のメンバーは、200メートル代表の白石黄良々(セレスポ)、前回1走でスタートが得意な多田修平(住友電工)、リオ五輪でアンカーのケンブリッジ飛鳥(ナイキ)。何通りものオーダーが考えられ、選手の特長を生かす組み合わせを予想するのも楽しい。
軸となる走順は小池、白石、桐生、サニブラウン。前回王者の英国、米国が強力なライバルになりそうだ。新布陣でバトンワークが決まれば、頂点が見えてくる。
準決勝で9秒台を
男子100メートルはサニブラウン、桐生、小池が日本勢初の決勝進出を目指す。中でも20歳のサニブラウンの能力は計り知れない。6月の全米大学選手権で日本新。日本選手権では2年ぶりに100、200メートルの2冠を達成した。目標はファイナリストにとどまらず、表彰台を見据える。
2年前に日本人で初めて10秒の壁を破った桐生は今季、10秒0台を連発して安定感が光る。7月に9秒台に突入した小池も、決勝を狙う力は十分。過去の大会では、準決勝で9秒台を出せば確実に通過している。今回も10秒00前後のタイムが求められそうだ。
日本記録続出の跳躍
今季、目覚ましい躍進を遂げたのが男子跳躍陣だ。走り高跳びの戸辺直人(JAL)、走り幅跳びの城山正太郎(ゼンリン)、橋岡優輝(日大)の3人は、日本記録を塗り替えて勢いがある。
戸辺は2月に従来の日本記録を2センチ上回る2メートル35をクリア。この記録は今年の世界1位に当たる。バレーボール男子のネットの高さが2メートル43なので、想像するとそのすごさが分かるだろう。
走り幅跳びは8月に橋岡が8メートル32を跳び、日本記録を27年ぶりに更新。城山も同じ大会で8メートル40と続いた。両種目とも過去に入賞した日本選手はおらず、初の快挙に挑む。
「お家芸」競歩は連続メダルを
日本は前回大会で銀1、銅2の計3個のメダルを獲得した。そのうち2個をもぎ取った日本の「お家芸」と言える男子50キロ競歩は、日本勢3大会連続の表彰台が射程圏内に入っている。
その筆頭が20キロ競歩で世界記録を持つ鈴木雄介(富士通)。50キロに初めて本格挑戦した4月の日本選手権で、いきなり日本新を出して周囲を驚かせた。「世界一美しい」と称賛される歩型も見逃せない。
ママ寺田、10年ぶり出場
女子100メートル障害の寺田明日香(パソナグループ)は13年に一度引退したが、結婚、出産、ラグビー転向を経て、6年ぶりに復帰。5歳のまな娘の声援を励みに、12秒97の日本記録を打ち立てた。「ママさんハードラー」は、10年ぶりとなる世界の舞台でどんな走りを見せるか。
以前、「公務員ランナー」として話題を集めた川内優輝(あいおいニッセイ同和損保)は、今回が4度目の出場となる。3月いっぱいで埼玉県庁を退職し、プロに転向。完走したフルマラソンは通算100回が目前だ。文字通り、百戦錬磨の32歳は自身初の入賞を狙う。
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他にも、男子110メートル障害の高山峻野(ゼンリン)、女子やり投げの北口榛花(日大)が日本新記録を出し、日本陸上界は飛躍の時を迎えている。好成績を残して、東京五輪へ弾みをつけたいところだ。(了)
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