スポーツ

『スポーツと君たち――10代のためのスポーツ教養』のまえがきを公開!

 本書には,10 代の皆さんに知ってほしい,スポーツにかかわる教養,あるいはメッセージがぎっしりと詰まっています。いいかえると,10代の皆さんのスポーツ実践を全力で応援する書籍です。

スポーツが大好きな10代の皆さんへ

 現在,運動部活動や民間スポーツクラブで熱心にスポーツに挑戦している人は多いでしょう。そこでは,「レギュラーを勝ち取るためには…」「勝つためには…」と考え,少しでも上達しようとプレーしているはずです。勝ち負けにこだわらないスポーツ実践を仲間とともに楽しんでいる人もいるでしょう。これら「する」スポーツのありかたに優劣はなく,どちらもとてもすばらしい姿です。
 一方で,スポーツには「する」以外の楽しみかたもあります。たとえば,皆さんのなかには,競技場で直接,あるいはテレビ中継でスポーツ観戦を楽しむ人はいないでしょうか。これは「みる」スポーツといえます。また,野球部のマネージャーは,仲間を支えることで喜びや楽しさを感じています。これは「支える」スポーツといえます。スポーツをめぐる諸問題も存在します。体罰問題,スポーツ傷害,部活動での人間関係……,これらを解決するためには,皆さん自身が学び考え,知識を得る必要があります。これは「知る」スポーツといえるでしょう。このようにスポーツとのかかわりかた,楽しみかたは実に多様です。
 10代の皆さんはやがて大人になります。もしかしたら,スポーツを継続するかもしれません。親になり未来の子どものスポーツを応援することもあるはずです。家族でスポーツ観戦に行き,大きな声でひいきのチームに声援を送ることもあるでしょう。このように,皆さんがスポーツと生涯にわたってかかわっていくことを,「生涯スポーツ」といいます(詳細は第4章)。
 そうやって,過去も現在も,そして未来もスポーツにかかわっていくときに,皆さんが大好きなスポーツとは,そもそも「なんであるのか」「どのようにうまれたのか」「どのようにかかわっていけばよいのか」などを知りたくはないですか?本書はそんな疑問を解決するきっかけになるはずです。

スポーツ実践を応援する保護者・指導者の皆さんへ

 私の3人の子どもは,陸上,ラグビー,野球とそれぞれ熱心に取りくみました。そこでは,技術を習得するだけでなく,努力することの大切さ,仲間との人間関係,対戦相手へのリスペクト,大人との接しかた,用具を大切にする姿勢など,さまざまな学びがあったと思います。わが子はスポーツで大きく成長しました。その姿を応援させてくれた子どもたちに感謝しています。
 スポーツは10代の若者にとってかけがえのない学びの場です。その学びをこれまでよりも豊かにするために本書は貢献すると確信しています。スポーツの主役は子どもたちですが,それを支え応援する保護者・指導者自身も「生涯スポーツ」の実践者であり,主役の一人なのです。本書を手に取っていただき,目の前の子どもたちとともにスポーツを楽しんでいただけると幸いです。

2019年6月 佐藤善人

〈以下、著者インタビュー〉
――この本の魅力を一言で教えてください。
 10代の子どもたちがスポーツ全般に関する知識(教養)や,スポーツとの多様なかかわりかたを学ぶためのヒントが詰まった一冊です。

――運動技能を高めるためのノウハウが書いてあるのではなく,「スポーツとのかかわりかたを学ぶ本」ということですね。
 多くの中・高生は「スポーツ=するもの」と捉えているのではないかと思います。もちろん,スポーツをすることは素晴らしいスポーツとのかかわりかたです。一方で「する」以外にも「みる・支える・知る・創る」などかかわりかたは多様です。10代のうちから,こうした豊かなスポーツとのかかわりかたを実践してもらいたいというのが本書の大きなテーマの一つです。

――どういう子どもに読んでもらいたいですか?
 一番は,スポーツにほとんど興味がない中・高生です。そういった子どもたちが,この本を読んで「スポーツをすることは得意じゃなかったけど,これなら自分も楽しめそう!」という気持ちを持ってもらえると何より嬉しいです。

 次に,スポーツを一生懸命プレーしている子どもたち。中でも,先生(コーチ)の指示や仲間の言うことに流されがちな子にはぜひ読んでほしい。スポーツでは自分が主役なんだ,自分で考えてプレーすることに大きな意味があるんだと思ってもらえるはずです。

 他にも記録が伸び悩んでいる子や,今まさにスポーツを続けようかやめようか悩んでいる子にも目を通してみてほしい。「第11章 部活の悩み」には,「部活はやめてもいいんだよ。でもスポーツが大好きならもう少しがんばってみよう。」といったメッセージが書かれています。

――子どもの読書離れが指摘されていますが…
 本書では,著者が読者の目線に立って一緒に考えていく,といったような書きぶりを心がけました。ですので,読書に苦手意識があったり,普段本を読まない中・高生でも,読みやすい一冊だと思います。また,各章が1話完結型のスタイルになっているので,気になるテーマを短時間で読む,という読み方も可能です。

――ずばり,おすすめの章はどこですか?
 「第6章 心が育つスポーツとのかかわりかた」では,メンタルトレーニングを取り上げました。メンタルと聞くと,なんとなくはじめから強い人/弱い人がいるように思われがちですが,じつはメンタルは,運動技能と同じように“鍛えるもの”なのです。

 「第22章 マスコミとあなた」では,サッカーロシアW杯の日本対ポーランド戦を題材にして,同じ試合でも,みる人によって見方が異なることを解説しています。…挙げればキリがないですね。全部がおすすめです!(笑)

――「第1章 スポーツとは『面白い』もの」の内容が気になるのですが…
 中・高生に「なんでサッカーやるの?」と尋ねると,「試合に勝ちたいから。」「うまくなりたいから。」といった答えが返ってくると思います。でも,そもそもなぜスポーツをはじめたのかを考えてもらうと,「勝ちたいから。」ではなかったはず。そうではなく,「プロの選手に憧れて。」や「ボールを蹴ることが好きだったから。」という理由がほとんどなのではないでしょうか。まさにサッカー自体の魅力に惹かれていたのだと思います。でも長年サッカーを続けていくうちに,そういった気持ちがだんだん薄れていってしまい,「勝つこと」「うまくなること」だけが目的になってしまっている。そんな現状が少なからずあるのではないでしょうか。10代の皆さんには,どうかスポーツをはじめた頃の,スポーツそれ自体を楽しむ気持ちを忘れずに,プレーし続けてほしい。そんなことを書いています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

佐藤 善人 [編著]

https://www.taishukan.co.jp/book/b471910.html

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