みんなで考える、持久走・長距離走の授業革命
第1回 始動!「ランニング実践を語る会」―取り組みの趣旨と第3回の報告―
「授業革命」のさらなる展開をめざして
こんにちは、椙山女学園大学の佐藤善人です。
拙著「持久走・長距離走の授業革命 -『つらいだけ』から『楽しい』への実践アイデア」(佐藤善人・齋藤祐一・髙田由基 編著)が2025年3月に上梓されてから半年以上が経ちました。すでに多くの先生方が手に取り、持久走・長距離走の授業づくりに着手されていると思われます。本当にうれしいことです。
一方で、これまで数冊の書籍づくりに関わりましたが、やや引っかかることがありました。それは、著者の考え方や想いは読者に伝わっているのか、ということです。もちろん紙面で伝わるように努力するのですが、紙幅の関係で十分には書くことができない場合があります。
こういった問題意識から、編著者の3名で話し合い、オンラインサロンとしての「ランニング実践を語る会」(以下、「語る会」)を企画しました(10月までに3回実施)。1時間とコンパクトではあるものの、書籍を活用しながら議論を深める画期的な取り組みだと思います。
この度、その様子と参加者の学び(感想)を「保体編集部ONLINE」に掲載することとなりました。これにより、ますます拙書を活用して、持久走・長距離走の授業革命が進むことを期待しています。
第3回:「小学校×ランニングフェスティバル」をみんなで考える
「語る会」では、実践編の著者にご登場いただき、紙面では伝えきれなかった実践の苦労や子どもの様子を伝えてもらっています。その後、参加者との質疑応答です。
今回は第3回「語る会」の様子について紹介します。ここでは、第3章10節「『する』『みる』『ささえる』を楽しむランニングフェスティバル」が取り上げられました。本実践の著者は小学校教諭の笠松具晃先生です。
本実践では、ランニング嫌いを生む温床となっていると指摘されることが多い、順位を決めるマラソン大会を止め、走るだけでなく、応援したり、支えたりする、全校によるイベントに改革した取り組みを紹介しています。詳細はぜひ書籍をお読みください。

会の中で笠松先生は、行事を変えることの難しさについて強調して話してくださいました。フロアからは、「改革されたイベントは支持できるものの、どうしたら先生方や地域の理解を得て改革できるのか」という質問がありました。これに対し笠松先生からは「学習指導要領を根拠に説得した」という説明がありましたが、参加者からは「学習指導要領は10年に一度変わるので、ランニングフェスティバルがもつ理念のようなものに注目して行事改革を進める必要がある」という意見も出されました。その他、活発な議論がなされました。

以下、参加者の感想を紹介します。
第3回の感想:小笠原倫汰さん(東京大学大学院)
この度は、貴重な機会をいただき誠にありがとうございました。
今回取り上げていただいた「『する』『みる』『ささえる』を楽しむランニングフェスティバル」の実践は、子どもたちの意欲を最大限に引き出し、またスポーツ基本計画における指針や学習指導要領における「走る」という活動の位置づけを見直す貴重なきっかけとなる内容だったと感じました。従来の持久走大会では、どうしても持久力の向上やタイム・順位などの数値として見える結果が重視される傾向にありましたが、「ランニングフェスティバル」という新たな形式を取り入れることで、BGMの活用やコースの工夫、学年を超えた応援やボランティア活動を通じた協働など、さまざまな要素が加わり、子どもたちはもちろん参観していた保護者の方々も走ることへの見方が変わったのではないかと思っています。
新たな実践に取り組む中で見つかっていく課題もあるかと思いますが、小学校期からこのような価値観に触れることは、その後の運動に対する考え方や態度にも大きく影響すると思います。より多くの方々に本実践の意義を知っていただき、走ることに対する新たな視点が広がることを願っています。
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次回は、「語る会」第4回(2025年11月13日実施)よりご紹介したいと思います。どうぞお楽しみに。
「語る会」のご案内
オンラインで、どなたでも気軽にご参加いただけます。
・次回開催:12月17日(水)18:15~
・お申込みは右記まで(12月15日(月)締切) https://forms.gle/8m1iNyuLj6pycEQn7
・詳細は、ランニング学会ホームページ(https://e-running.net/0331others_250911.html)もご覧ください。

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