ペタコさんの 和のある暮らし
[第27回]一閑張りの手提げ
石橋富士子

外出時に手にするかばんやバッグ,どんなものを使っていますか? ブランド・ロゴ入り? 高級な皮のバッグでしょうか。手提げ,リュック,ショルダー・タイプなど本当にいろいろな種類があります。
着物で暮らすようになると,それまで使っていた機能的なショルダー・バッグは合わない気がするし,かといって和服売場にあるようなかっちりした西陣織などの和装バッグもどうも自分にはしっくりこない。
そこで,「自分で使いたいバッグ」をつくることにしました。思うようにならずとも「使うのはワタシ」なのでよいのです。
参考にしたのは手芸家・下田直子さんの本。布でつくるシンプルなバッグですが,刺繍やビーズなどで飾り,持ち手にも竹や皮など意外な素材を組み合わせたバッグは綺麗で楽しくて,つくり始めた頃は熱中して毎月ひとつ手がけていました。今はなかなか新しいものをつくる時間がないけれど,その頃つくったバッグは今も愛用しています。
さて,今気になるのは一閑張りの手提げ。一閑張りは竹でつくったカゴの上から何重にも和紙を貼り,その上から漆を塗って仕上げて持ち手をつけた箱のようなバッグです。表面はなかなかの強度があり,少し押したくらいではへこまないので,壊れやすかったり,形くずれしては困る繊細なものを入れても安心です。また,重さも軽く,見た目よりたくさん入れられる上にコーテイングしてあるので雨に濡れても大丈夫。私もぜひつくってみたい,と先日イベントで幾度かごいっしょしている一閑張り作家の友人からその製作の工程をうかがって驚きました。山から切りだした竹の中心に鉄棒を入れて節を砕き,それを割ってつくった竹ヒゴを編んでカゴにする……私にはとてもできません。
でもひらめきました。カゴをつくるところは彼女にまかせ,私ができる部分を加えたら,一閑張りのコラボ手提げがつくれるのではないか?と。こうして友人がつくった手提げに私が絵を描く,というスタイルのコラボ手提げが完成しました。
これも「和する」ことを喜ぶ「和」のスタイル。完全手づくりなので少しずつしかつくれないけれど,この手提げを通して竹や手仕事,一閑張りのこと,そこに私が描いた植物画のことなどをお伝えできたら嬉しいな,と感じています。
(2018年10月1日発行 家庭科通信63号掲載)
著者プロフィール
石橋 富士子(いしばし ふじこ)
毎日を着物で暮らすイラストレーター。教科書,絵本などの他,和小物製作デザインやオリジナル落雁の型を使った落雁作りワークショップなどを開催。「家庭科通信」の表紙も創刊時から手がけている。著書に「知識ゼロからの着物と暮らす・入門」「知識ゼロからの着物と遊ぶ」(幻冬舎)。着物をもっと楽しむための刺繍和小物をつくる富士商会を2015年設立。https://fujipeta.com/
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