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相関関係と因果関係を混同してはいけない理由
郡山さくら,澤田亨(早稲田大学)

 今回は,「〇〇があるせいで,△△になった」「××したら,◆◆になるかもしれない」など,ある出来事どうしを関係づけようとする時に気をつけるべきことについて解説していただきます。運動・スポーツや健康に関連することを考えるのに,とても重要な内容です。(編集部)

 

はじめに

 みなさんは「相関関係」「因果関係」という言葉を聞く機会があると思います。しかし,この二つの違いをちゃんと理解できているでしょうか。「何らかの関係がある」ことを意味する点では同じですが,これらの言葉は,似ているようで実は大きく異なるものです。

 相関関係と因果関係を混同してしまうと,情報を間違った形で解釈してしまう可能性があります。

 

相関関係とは

 相関関係とは,「二つの値の間に関連性がある関係」のことです。つまり,一つの値が変化すると,もう一つの値も変化することを指します。

 例えば,「ライターの所持」と「肺がんに罹るリスク」には相関関係があります。ライターを所持している人が多い集団ほど,肺がんに罹るリスクも高い傾向がみられます。しかしながら,ライターの所持自体は肺がんに罹ることに直接影響を及ぼすわけではありません。ライターを所持している人はタバコの喫煙者である可能性が高いため,肺がんに罹るリスクが高い傾向にあり,実際に影響を及ぼしているのはライター自体ではなくタバコの喫煙です。

 このように,一つの値(「ライターの所持」)が変化するともう一つの値(「肺がんに罹るリスク」)が変化するので,この二つの値には相関関係があるということができます。なお,ここでは本当に原因となっている値は何か,ということは問いません。

 

因果関係とは

 因果関係とは,「原因とそれによって生じる結果との関係」のことで,原因の「因」と結果の「果」が組み合わさった言葉です。つまり,一つの値を原因として,もう一つの値である結果が変化することを指します。

 例えば,「タバコの喫煙」と「肺がんに罹るリスク」だと,タバコの喫煙を原因として肺がんに罹るという結果が考えられるため,この二つの値には因果関係があるといえます。

 

相関関係と因果関係の違いとは

 ここで整理をしてみましょう。「ライターの所持」と「肺がんに罹るリスク」,「タバコの喫煙」と「肺がんに罹るリスク」は,両方とも一つの値が変化すると,もう一つの値が変化します。つまり両方とも相関関係があります。

 しかし前者は,「ライターの所持」が「肺がんに罹る」原因とは考えられないので,後者のように因果関係があるとは言えません。

 つまり,因果関係がある場合には相関関係もあるが,相関関係がある場合は必ずしも因果関係があるわけではない,ということになります。

 

相関関係と因果関係を混同する

 相関関係と因果関係を混同すると,情報を間違った形で解釈し大きな誤解を招いてしまう可能性があります。特に気を付けたいのが,相関関係のみの事例を勘違いして因果関係があると拡大解釈してしまうケースです。

 例えば,上記の例で相関関係と因果関係を混同し情報を過大解釈すると,肺がんの予防のためにライターの所持に制限をかけよう!といった取り組みを行ってしまう可能性があります。

 こんなわかりやすい誤情報に自分は騙されない!と思うかもしれませんが,世の中にはこのように過大解釈され発信されている情報が数多くあります。影響力が大きい人の発言や誇張されたコマーシャルを耳にすると,安易に信じてしまうこともあると思いますが,本当に因果関係があるかどうかは一度疑って考え直す必要があるかもしれません。

 

因果関係の証明

 因果関係を証明する場合には,「ランダム化比較試験」(*注)と呼ばれるテストが必要になります。ランダム化比較試験は,原因と思われることを与えた人(介入グループ)と与えない人(対照グループ)をランダムに振り分け,介入グループと対照グループで結果を比較する方法です。

 例えば,倫理的な問題があることから実際にできる試験ではありませんが,先に例として出したタバコの喫煙と肺がんの因果関係を証明する場合,非喫煙者を集め「喫煙する(介入)グループ」と「喫煙しない(対照)グループ」にランダムに振り分けます。もし喫煙したグループの参加者が喫煙しなかったグループに比べて肺がんに罹る率が高くなっていれば,タバコの喫煙は肺がんに罹ることに影響を及ぼす,という因果関係を証明することができます。

 一方で,ライターの所持の介入試験を同じようにやってみても,ライターを所持してもらったグループは所持しないでもらったグループと比べて,肺がんに罹る率が高くなることはありません。このことから,ライター所持と肺がんに罹ることの間には因果関係がないことが証明されます。

*注:詳しくは「物事を科学的に比較するために大切なこと」(2021年4月)の記事を参照。
https://www.taishukan.co.jp/hotai/media/blog/?act=detail&id=285

 

まとめ

 本記事では,「相関関係と因果関係を混同してはいけない理由」を解説させていただきました。何らかの関係のある二つの値のデータを見た際はすぐに因果関係があると判断せずに,実際に二つの値の間に原因と結果の因果関係があるのかを改めて考え直してみましょう。本記事が皆様のお役に立てば幸いです。

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